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2010年5月19日 Category: 読んだ Tag: , ,

デザインイノベーション /ハルトムット・エスリンガー 表紙
デザインイノベーション ~デザイン戦略の次の一手~」を読みました。この本は、クリエイティブデザイン・ファーム「フロッグデザイン」(frog design)の創始者ハルトムット・エスリンガーが著した経営戦略の本。

フロッグデザインは1969年に工業デザイナーのハルトムット・エスリンガーによってドイツで創立されたデザインコンサルト会社。
アップルのApple IIcの筐体のデザインや、Windows XPのロゴ、ルフトハンザ航空のデザインを手がけたことで有名です。

タイトルから「デザインの本」という感じですが、デザインを通して経営やこれからのビジネス戦略にまで通じる、「ビジネス」に重点が置かれています。

著者が冒頭に述べているように、
「ビジネスにデザイン主導のイノベーションを取り入れるための実践ガイド」
とも言える一冊だと思います。

現在、ビジネスの世界は、激しい大規模な変化の真っ只中にあります。

大量生産される模倣品に埋め尽くされた市場では、閉塞感がただよい、
従来のフラット化されたビジネスモデルの転換が求められています。

そんな中、現在勢いを増しているのは、Appleや任天堂など、
イノベーション主導のビジネス手法を用いた企業。

イノベーション主導のビジネス戦略を成功させるには、どういうことが決め手になるか、
なぜそれらの企業はイノベーションを用いて成功できたのか。
それらの理由について、デザイナーとビジネスリーダー、双方の視点から、自らのデザインエピソードを紹介しながら解説されています。

本の中から、面白いと思った著者の言葉を以下に抜粋。

・誰でも創造性は備わっている。大事なのは、自分の能力を知り、伸ばし、守れるかどうか。そしてそれを開花させられるかどうか。

・デザインは優れたビジネス戦略の一部であって、芸術ではない。

・幹部がビジョンを共有せず、社内に分裂が生じるようでは、デザイン主導のイノベーション戦略を会社全体で遂行することは不可能だ。

・クリエイティブな人間の多くは、ビジネスとデザインは全く別物だと感じているのは問題だ。

・これから必要なのは、融合技術にもビジネスにも通じた創造性豊かな戦略的なデザイナー

・デザイナーの仕事とは、人間と、科学や技術やビジネスとのあいだのインターフェイスを作ることだ。

あと、著者が日本と関係が深かったからか、本書には日本に関することも所々出てきます。

「大賀典雄から出井伸之を後任に選んだとき、ソニーの崩壊は本格的に始まった」

「アップルのイノベーションは、大前研一の教えをそのまま実行したような、先を見通したリーダーシップと、社内の緊密なコミュニティとがうまく噛み合うことで生まれたシンプルなソリューションだった。」

などなど。
あくまで著者の見解ですがw。
エスリンガーさんが大前研一を知ってるというのはビックリでした。

本の最後の方に書かれてて、面白かったのが、「 オープンソースデザイン」という考え。
これからのデザインやビジネスはオープンになっていくべき。
Linuxのような道を歩むべきだという考え。

これからは、デザインやビジネスが、社会全体に利益をもたらすシステムを作るべきだとのこと。

・世界中のデザイナーや開発者が部品や製品のコンセプトを参照できるようにする

・オープンソースのデザインでは、各ブランドが「島国的」にそれぞれ独自に開発を勧めることはなくなる

・互いに協力しあえるシステムが生まれ、コンセプトに基づくイノベーションや選択によって、製品の特徴や価格が決まる

・デザイナーはレゴを組み立てるように、互いに接続しあえる様々なデザイン構成要素から好きなものを選び、組み合わせることでユニークな製品を作り出せる

・オープンソースのデザインや開発では、共通の部品や技術が使われることに加え、幅広い利用者や開発者から意見が集まるので、融合製品の開発もしやすくなる

これは、現実的にビジネスとして成り立つのか、果たしてそんなことが可能なのかは分かりませんが、もしこれが実現したら面白いことが始まりそうですね。

フロッグデザインのような会社、と言うと、まずIDEOが思い浮かびますが、
そのIDEOの「発想する会社! (The Art of Innovation)」よりも、
よりビジネスに重点が置かれた本でした。
この本は、デザイナーはもちろんのこと、ビジネスに関わる人も読んで勉強になる本だと思います。

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